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機関誌「看護」2026年5月号
国際看護師協会(ICN)の人道基金 #NursesForPeace
日本看護協会 国際部
ICNの人道基金#NursesForPeace(※1)は、2010年にハイチ地震を受けて設立された災害支援基金に端を発し、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻を契機にキャンペーンが開始された。以降、相次ぐ政治危機、戦争、自然災害を含む緊急事態や人道危機へ対応すべく支援対象範囲を拡大し、最前線でケアにあたる看護師やその家族、看護師協会を支援してきた。近年では、アフガニスタン、エチオピア、イスラエル、ヨルダン、レバノン、モーリタニア、ミャンマー、パレスチナ、ソマリランド、南スーダン、スーダン、ウクライナなど10カ国以上にわたって支援が展開されている 1)。
ロシアによるウクライナ侵攻は、4年以上を経た今も、緊迫した状態が続いている。ICNは、保健医療施設への意図的な攻撃に対し強い懸念を示し、ステークホルダーと連携して国際人道法の順守を訴えてきたが、WHOの発表によれば、ウクライナの保健医療従事者や保健医療施設への攻撃は少なくとも2,881件に上り(2022年~2025年)、2025年には前年比20%の増加が示された 2)。そうした中、ICNは現地の看護師協会と連携し、保健医療活動に必要な物資の提供に加え、2025年には危機対応と復興を支援するための看護リーダーシップ(NLCRR:Nursing Leadership for Crisis Response and Recovery)プログラムの無償提供を開始。本プログラムは、他の紛争・災害地域への展開も予定している。
また、人道基金#NursesForPeaceのさらなる発展に向けて、人道支援団体Direct Relief(※2)と戦略的提携を結んだ。Direct Reliefの専門性とICNの知見、そして各国看護師協会が持つ地域の保健医療ニーズへの深い理解の融合により、危機的状況下にある看護師への支援を強化するとともに、必要な場所へ迅速かつ重点的な支援を届ける連携体制が構築された。
Direct Relief の Byron Scott 氏( President & Chief Operating Officer)は、2025年ICN大会の基調講演に登壇し、「平和とは、単に紛争がないということではない。すべての人々に機会、公平性、尊厳、そして支援が存在する状態である。平和への営みの中で、日々、尊厳をもって公平なケアを提供する看護師は、まさに『公平性』と『尊厳』という言葉を体現する存在である」と述べた。
国際保健において、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(※3)達成を共通課題とする認識が醸成される一方、米国のWHO脱退や、地政学的な緊張の高まりとともに不透明さが増している。ウクライナなどの危機的状況において、すべての人々、特に脆弱な状況にある人々への保健医療の持続的かつ安定的な提供は優先課題であり、その重要な役割を担う看護師への支援は欠かせない。看護師を支援することを目的に掲げた人道基金#NursesForPeaceは今後も、看護師と保健医療システムの差し迫ったニーズへの対応に重点を置きながら、持続可能な保健医療システムのレジリエンスの基盤づくりを進めていく。
※1 寄附はこちら(ICNホームページ)
※2 医療リソースを提供することで貧困や緊急事態に陥っている人々の生活を改善することを使命とする非営利の人道団体
※3 すべての人が必要な保健医療サービスを経済的負担なく受けられる状態
引用・参考文献
1) ICN: #NursesForPeace - Campaign update 7【日本看護協会訳】.
2) WHO:Attacks on Ukraine’s health care increased by 20% in 2025.[2026.2.27 確認]
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