新人看護職向けコラム
コスパ・タイパに逆行して

「わざわざ遠いところでバイトするの無駄じゃない?」「就職先は家から通えるところが第一希望」看護実習の休憩中、学生たちの会話が耳に入る。通勤時間を最小限にするタイムパフォーマンスや、一人暮らしという家賃が要らないコストパフォーマンスを重視していることがうかがえる。
ふと、自分を振り返る。高校は、制服を着て友達とお店に寄ったりすることを夢見て、あえて自転車で30分以上かかる遠い高校を選んだ。そして、就職先は、都会への憧れから「横浜」という地名だけで選んだ。東北出身の私にとっては、実家も遠く一人暮らしもしなくてはならない、コスパもタイパも最悪である。
新人時代の私も、相当タイパは悪かった。明日受け持つであろう患者さんの疾患を勉強して出勤すると、その患者さんは転棟してすでにいなかった。病状の変化を予測できていなかったのだ。また、処置に使う物品が足りず、何度も病室とナースステーションを行ったり来たりして、患者さんにも迷惑をかけていた。
でも、一度学習した疾患はのちに役立ったし、一度忘れた物品は次の時には忘れないように気を付けたりと、まったくの無駄ではなかった。そして、憧れの地横浜で出会った同期入職の仲間は、20年以上経ちそれぞれの立場が異なる今でも、看護という共通の言語で語り合い、旅行などにも行く戦友であり、これはHigh Performanceといえる。
私は、看護小規模多機能型居宅介護の管理者として、もう一度新人を経験した時期がある。老人看護専門看護師として活動し始めたころでもあり、無我夢中だった。訪問スケジュールの詰まった中、認知症の高齢者の自宅へ訪問すると、お客さんが来たと勘違いしてお茶を煎れてくれた。断り切れず、こたつに入り一緒にお茶をいただいた。暖かいお茶と、その方の包容力で、焦っていた緊張感がほどけていく感覚があった。無駄使いしたと思ったその時間は、結果的に効率だけを考えては得られない、認知症の方の語りに耳を傾ける貴重な時間となった。
コスパ・タイパの考え方はとても大切で、私自身も大賛成である。これからの世界には必須である。ただ、看護学生時代に多くの費用や時間をかけたように、新人である今こそ、たくさんの遠回りや時には後ろに戻ってみたりしてほしい。費やした費用や時間がきっと、効率だけでは解決できないあなたの看護の力になってくれると私は信じている。

